辻村深月「スロウハイツの神様」感想

文学部女子大生の日常・感想
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2017.3.1 辻村深月「スロウハイツの神様」感想

BOOK INFO 辻村深月「スロウハイツの神様」

趣味の読書に関して、最近、辻村深月さんの「スロイハイツの神様」を読了しました。辻村さんと言えば、最近「かがみの孤城」で本屋大賞を受賞しましたよね。
気になっていたところ、友人に「スロウハイツの神様」をすすめられたので読んでみました。

内容ですが、舞台は有名な若手脚本家が大家をする池袋にあるアパート「スロウハイツ」、学生時代の友人や仕事の知り合いなどだけで住人が構成されている群像劇です。
環という女性の若手脚本家、超売れっ子小説家のコウちゃん、コウちゃんの担当編集の黒木さん、映画監督を目指す正義、才能に恵まれた画家のスーちゃん、漫画家を目指す狩野、そんな6人が中心となった物語なのですが、全員クリエイティブな仕事に関わってるだけあって、頑固で譲れない信念を持っている人が多く、だからこそすれ違いが起きたり喧嘩をしてしまったりする、という小説です。

お話のメインになるのは脚本家の環と小説家のコウちゃんで、上下巻なんですけど、下巻は環とコウちゃんの過去から今に至るまでのお話が殆どのページを占めています。
それでも、正義が監督としてどんな映画を撮りたいのかを探る葛藤だったり、スーちゃんが共依存に陥ってしまった恋から立ち直ってまた筆を取るまでの成長の具合だったり、黒木さんがどれほどの策士でコウちゃんやその周りの環境を上手く使ってきたか、まるで登場人物に現実の人生があるかのように重量を持って感じることが出来る、充実した内容になっています。

ミステリー小説なので細かい話の展開はネタバレになってしまうため書けませんが、環とコウちゃんの過去がそれぞれ明かされて今までの些細な描写が全部伏線として回収されていく展開は、さすが辻村さん!の一言でした。
それに、それぞれの人物が誇りを持ちながら仕事に向かう様は憧れを抱いてしまうし、それこそ色んな人が出てくる小説だから、読んだら「目標にしたい」って思える人も見つかるはず。

特に私は、脚本家でいること、話を作り続けることに関して、身を削ってでも書き続けないといけない、その才能をスティグマとして刻まれたという描写がされている環が、格好良くて「こうなりたい」と思わされました。
環みたいに才能を持たなくても、仕事に向かう姿勢なんかは目標に出来る気がするので、頑張りたいと思います。

読み応えがあってとても面白い小説だったので、ぜひ未読の方は一度読んでみてください。

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