江國香織「落下する夕方」「きらきらひかる」感想

文学部女子大生の日常・感想
好きな本・映画などの感想や日常を綴っています。

2017.7.16 江國香織「落下する夕方」「きらきらひかる」感想

BOOK INFO 江國香織「落下する夕方」

江國香織さんと言えば、直木賞受賞作家で、「間宮兄弟」「冷静と情熱のあいだ」などが有名ですよね。
有名な作家さんだからこそあんまり手を伸ばせない…と思っていましたが、面白いよってすすめられて「落下する夕方」を読んでみました。

話は、一人の女性が主役です。冒頭で何年も同棲を続けていた彼氏に別れを切り出されてしまいます。その理由は「彼氏に好きな人が出来たから」。でも彼氏は、その好きな人と付き合ったりするわけではなくて、ただ単にその人を好きになってしまったらしい、ということ。
そしてあろうことか、同棲していた部屋にその彼氏が惚れた人である華子が転がり込んで、主役の女性と同居生活を始めることになるのです。

猫のような華子の、女性としての魅力、人間としての魅力が主役の女性目線で描かれ、一度別れたその女性と男性は、「華子に惹かれた者同士」としてお互いに理解を示し、別れる前より不思議な関係と空気が漂うようになります。
四季を通じた一年間の小説ですが、冒頭と最後が同じシーンな分、余計に「一年で急激に起こった変化」が描かれ、自分の読後に一年経ってしまったんじゃないかと錯覚してしまうほどでした。

BOOK INFO 江國香織「きらきらひかる」

それから、もう一つの代表作である「きらきらひかる」。

これは設定が凄くて、アルコール中毒の女性とゲイの男性が仮面夫婦として結婚して、旦那さんの彼氏と三人で繰り広げられる人間模様を描いた小説になります。

読んでみて分かったのが、江國さんの独特な描写の仕方に魅力があるのだということです。オノマトペが印象的なのはきっと全作品を通じて、それから「きらきらひかる」は特に、アルコール中毒の女性の、どこか可笑しくて幻想的な世界の描写は読んでいてぐっと惹きこまれてしまいました。

女性の目線で語られることが多かったのですが、出てくる人物は女性も男性も関係なく人に振り回されて、感情を持て余して、二作品ともミステリーやサスペンスと違い日常が描かれた作品でしたが、すごく読みごたえのある小説でした。
この描写力なら、江國さんが見た世界を直接描いたエッセイもすごくおもしろそうだなと思ったし、童話や詩集なんかもすごく気になってしまいました。

長編じゃない短編集が多いのも、とっつきやすくて魅力的ですよね。次は短編集の「号泣する準備はできていた」を読んでみたいと思います。
江國香織さん、未読の方はぜひ、私と一緒に読んでみてください。

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